2014/1/30 - チケット転売について頑張って考えてみた

 チケット転売に関して、当サイトは肯定の立場を取っていますが、そもそも転売を禁止すること自体に法律的な問題はないのかというのが以前から気になっていました。


 まだ考えがまとまっていませんが、今考えていることを整理するという意味でも、いったん書き留めておきたいと思います。


 なお、これは「チケット転売を法的に規制すべき」というスタンスではなく、「チケット転売禁止を法的に規制すべき」というスタンスの記事です。前者の意見が読みたくて来た方はゴメンネ。


 いまのところ、この問題に関係しそうな法律は2つ、独占禁止法消費者契約法があると思っているので、それぞれについて今の考えを書いておきます。
独占禁止法上の問題
 転売禁止(かつ返品禁止)条項が、独占禁止法における「優越的地位の濫用」に該当するのではないか、という考えです。関係する条文はこのあたりです。
第19条 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない

第2条 (・・・)
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。 (・・・)
6.前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの (・・・)
ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。


 ただ、この考えにはそもそも独占禁止法は消費者契約を対象としてねーだろ、という致命的な欠陥があると思うので、今のところはこれを理由として挙げるのは無理があると思っています。法律にはどこにも消費者契約を除外するとは書いてありませんが、公正取引委員会のWEBページなどを見る限り、事業者間の契約を対象としているものと考えるのが自然ですよね。


 これについてちょっとググってみたところ、滋賀大学の内田耕作教授が2003年から2004年にかけて発表されている「消費者取引と優越的地位の濫用規制」という論文で、消費者契約に適用できるかどうかということを検討されたようですが、「適用できる」という結論にはなっているものの、主要学説ではどれも「適用できる」とはしていないようだったので、内田先生独自の見解ということであり、通説とは言えないように思います。ちなみに論文は滋賀大学経済経営研究所にある「彦根論叢」電子版から読めます。346号、347号、349号に分割して掲載されているので、興味のある方は読んでみてください。僕もななめ読みしかしていませんけど・・・。


 ただ、状況が比較的近い案件として、プレステの中古ゲームソフト禁止事件があります。これは、ソニーがプレステソフトを販売店に卸す際、「値引き禁止・中古取扱い禁止・業者間の横流し禁止(さらに返品も受け付けない)」を課したことが独禁法違反とされた(公正取引委員会 審決等データベースシステム)事例です。


 まあ、この件は業者間の取引ですがチケット転売は消費者取引の問題なので独禁法の問題として一緒くたにはできないということ、またそもそも独禁法は「公正かつ自由な競争を促す」ことが目的の法律ですがチケット転売禁止によって別に業者間の競争が阻害されてるわけではないこと等々、条件が全く違うのでこの2つの問題を関連付けるのはそもそも無茶な話です。


 とはいえ、ソニーがプレステソフトの中古・横流しを禁じた上返品も受けないという、まさにプレイガイドと同じことをやっているのが違法とされたのなら、一般論としてそういうのは良くないんだよね、という見方はできなくもないわけで、プレイガイドの転売禁止条項もやっぱり良くないよね、という意見の参考程度にはなるかな、というレベルです。ほとんど気持ち的な問題ですが。

消費者契約法上の問題

 もうひとつがそのままストレートに、消費者契約法第10条に違反してるんじゃないか、という考えです。ちなみに消費者契約法第10条っていうのはこんなのです。

(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条  民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。


 転売禁止(and返品不可)というのは、ここにいう「消費者の権利を制限」してると言えるのは間違いないと思います。その意味では違法の疑いは免れないと思います。


 ただ、そういう条項が無効とされるにはそれだけでは足りなくて、「民法第1条第2項…に反して商品者の利益を一方的に害する」ものでないといけないんですよね。民法第1条第2項というのはいわゆる信義誠実の原則(信義則)というやつです。


 消費者契約法第10条の適用問題はアパートなんかの賃貸借契約がらみの紛争でよく出てきます。地裁レベルだと消費者側が勝つ例もあるようですが、最高裁まで行くとほとんど業者側が勝っています。たとえば賃貸借契約更新時の更新料は有効とされた事件(PDF)のように、「消費者の義務を加重している」ことは認めても、無効とまでは言えないとされた例なんかが有名なようです。


 なんかズルい気がする結論ですが、要は民法第1条第2項、つまり信義則に違反しているとまでは言えないと言ってるわけです。ただここでポイントと言えるのは、「信義則に反して消費者の利益を一方的に害して」いるかどうかは『当該条項の性質、契約が成立するに至った経緯、消費者と事業者との間に存する情報の質及び量並びに交渉力の格差その他諸般の事情を総合考量して判断されるべき』とされていることです(この事件では、そういう事情をふまえて判断した結果、有効とされた)。とすると、もしかしたら、全プレイガイドが同じ条件でやっていて拒否できる余地がまったくない転売禁止条項はまた別かもしれません。


 とするとやはり、転売禁止条項が信義則に反するとまで言えるかという点で、上の事件で最高裁が示した判断基準に照らしてちゃんと検討しないといけないと思っていて、そういうわけで今の段階ではチケット転売肯定論にはこの主張は入れていません。これについてはもうちょっといろいろ調べてみて、やっぱり違法(転売禁止条項は法的に無効)だと自分の中で納得できたら追記したいと思います。

(いったん)まとめ

 というわけで、今のところ、転売禁止問題を法律的に考えるなら消費者契約法第10条の問題として議論するのがいいのかな、と考えています。


 でも、消費者契約法に対する判例の考え方とか学説はどうなってるのかとか全然調べ切れていないし、もしかしたら他にも使えそうな法律があるかもしれないので、この問題は引き続き考えていきたいなと思ってます。(思ってるだけ←)


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