ネットダフ屋とオークション

初稿:2005/09/20


 9月17日、Yahoo!のヘッドラインにひとつのニュースが掲載されました。 ニュース元は読売新聞で、「サツキの家入場券、タダが4万円…ダフ屋適用見送る」というものです。 多くの人は流し読みしてしまったかもしれませんが、これはライブ好きな人にとってはとんでもないニュースです。ネットオークションという巨大チケット市場にとっては大事件となりうるでしょう。

報道当時の記事が消えてしまっていましたが、別のURLで見られるようでしたので、追記しておきます。
ネットは「公共の場所」でない? 無料入館券販売「ダフ屋」適用見送り

 一体何がそんなに大事件だと思う方もいると思いますので、この記事を読みながら考えてみます。

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1.今回の事件について

 記事によれば、警視庁は、ネットオークションで「サツキとメイの家」の入館予約券を転売していた人物について、東京都迷惑防止条例は適用できないと判断したとのことです。つまりダフ屋行為ではないと判断したということです。なお、記事中で「警視庁以外の警察でも、同様の結論に至った模様だ」と述べていますので、全国どこの警察でも見解は同様ということです。さて、その理由については、
  (1) 予約券は無料だから「購入」ではない
  (2) インターネット上は「公共の場所」には当たらない
の2点を挙げています。

 ここで、念のため、ダフ屋行為を禁じた「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(以下、東京都迷惑防止条例)」の条文を確認しておきます。

第2条(乗車券等の不当な売買行為(ダフヤ行為)の禁止)

@ 何人も、乗車券、急行券、指定券、寝台券その他運送機関を利用し得る権利を証する物又は入場券、観覧券その他公共の娯楽施設を利用し得る権利を証する物(以下「乗車券等」という。)を不特定の者に転売し、又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため、乗車券等を、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、買い、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは公衆の列に加わつて買おうとしてはならない。
A 何人も、転売する目的で得た乗車券等を、公共の場所又は公共の乗物において、不特定の者に、売り、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは乗車券等を展示して売ろうとしてはならない。

 つまり、@の「〜において、買い、〜」に当てはまらないということ、またAの「何人も〜公共の場所又は公共の乗物において〜売り、〜」にも当てはまらないということからダフ屋行為としてこの条文を適用することはできないということです。

 なお、昔ニュースになったジブリの森美術館の入場券を大量にネットで転売して逮捕された主婦は、@の「〜不特定の者に転売〜するため、〜買い、」に該当しているので、本件とは事情が違います。

 さて、このように今回の件で警視庁および各道府県警の一定の見解が明らかになったわけです。冒頭で大事件だと言ったのはこの点で、この基準をもってすれば何が違法で何が合法かが見えてきます。以下で詳しく説明していきます。

 ※ なお、もちろん最終的な違法・合法判断は司法が行うことですが、警察が違法でないと判断すれば逮捕されることがなくなりますので、事実上合法化されたと言って良いと考えます。本稿で「合法」と言っているのはそういう意味です。

2.判断(1)について

 まず、無料で入手したチケットはどう扱おうと一切ダフ屋行為になりません。条文の「購入」に該当していないからです。となると、ミュージックステーションやポップジャムの観覧券についてはネット転売は全く自由だということです。コンサートの招待券、通称インビ(インビテーションカードの略)も転売は何ら問題ないということです。
 同様に野球の招待券や割引券、サービス券、とにかく無料で手に入るものはネット上での転売はすべて問題ないということです。これがまずひとつの大きな事件だと言えるでしょう。

3.判断(2)について

 これはネットオークションだけでなくそれ以外でも大きな事件かもしれません。警視庁が、「ネット上は公共の場所ではない」と判断してしまったのです。とりあえずはネット転売について述べます。

 まず、ネットオークションでの転売がすべて合法となりました。転売目的で購入されたと判断されない限り、ネット上での転売には問題がなくなりました。そればかりか、この条例自体が適用されないのですから、買うよう呼びかけようが展示して売ろうが合法だということです。とはいえネットオークションではこういう行為はすでに行われていますが。
 転売目的と判断された例は先にあげたジブリの例以外にも何件もありますが(参考:ネット取引事件簿(Yahoo!オークション))、おおむね百枚以上購入している場合のようです。10枚やそこらならば転売目的と判断されない可能性が高いです。とはいえ、何度も購入・売却を繰り返していたら、小枚数でも転売目的と判断されるおそれはありますが、その辺はご自身で判断いただければよいかと思います。極端に目立たなければ大丈夫でしょう。

 また、それよりも重要なのは、余った券を転売する行為が合法化されたということです。これは金券ショップにとって死活問題となり得ます。これまではネット転売がグレーであったため、チケットが余ってしまった場合金券屋に販売委託や売却して処分する例も多かったかと思います。しかし今後はそのような場合の転売が合法となったのですから、ネットで自ら転売したほうがマージンを抜かれない分確実に得です。金券屋に大量に持ち込むチケットゲッターへの取り締まりが厳しくなっている昨今、これは金券ショップにとってはコンサート、スポーツ等の興業券の仕入れルートを失う事態となりうるでしょう。

 また、ネット上が公共の場所でなくなることによって、その他の法律の適用にも制限が出てくるのではないかという気もしますが、該当しそうな法律が思いつかなかったのでこれについて触れるのはやめておきます。とりあえず名誉毀損罪が適用されなくなるのかと思ってしまいましたが、そんなことはないですね。

4.最後に

 さて、以上のように、今回の判断でネット上での転売の合法ラインがかなり明確になってきました。これは歓迎すべきことであると考えます。余ったチケットを処分する方法が増えたということは、一般消費者にとって非常にありがたいことであると思います。

 ネットを公共の場所ではないと考えた警視庁の判断は時代に逆行するようなきらいはありますが、ともあれ現段階でのネット転売の大部分が合法化されたことは喜ぶべきでしょう。ただ本来ならばチケットの転売自体合法化されるべきであると私は考えますので、最終的には今回のような解釈問題ではなく、法律自体が改正されることを望みます。

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