こんにちわ。中の人です。
前回の記事を書くためにSHOXXの商標についていろいろ検索していたところ、かなり昔の
「SHOCK WAVE」の商標に関する事件を見つけてしまいました(といっても、「SHOXX 商標」でググると一番上に出てくるので、「見つけた!」とドヤ顔でいう話ではないですが・・・)。
内容を見てみると、2001年に星子さん(SHOXXの元編集長。V系界隈では知らない人はいませんよね)が『SHOCK WAVE』の商標登録をしたところ、音楽専科社が「それは無効だ」ということで登録の取消を請求した、ということのようです。
あ、もちろんAdobeのShockwaveじゃなくて、V系イベントのSHOCK WAVEのほうですよ!
こんな事件があったなんて当時は全く知らなかったんですが、これって業界的にはとんでもない事件のような気がするので、きっと当時大盛り上がりしたんじゃないかと思って2chの過去ログとか探してみたんですけど、話題になった様子がありませんでした。
しかし、中身を詳しく読んでいくとなかなかアレな内情がいろいろと書かれていたので、もう10年以上前の話ですが紹介しますね。
ちなみにこの事件は商標の取り消しに関する話なので、音楽専科社VS星子さんという対決ではなく、音楽専科社が特許庁に対して「商標登録を取り消せ」という申し立てを行っています。しかし、実際には「取り消すな」という反論を星子さんが特許庁に対してすることになるので、特許庁に対して両者が「自分が正しい」という主張をぶつけ合うことになり、民事訴訟と似たような主張合戦になっています。
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まず、審決(これは裁判所ではなく特許庁が判断するので、判決ではなく審決といいます)の内容と、公表されている事実からわかる時系列を整理します。特に注記がないものは審決文に書かれていたことです。
・1996年:第1回SHOCK WAVEが開催
・2000年3月29日:星子さん(当時SHOXX編集長)が「SHOCK WAVE」の商標を出願
・2000年9月:星子さんが「株式会社スターチャイルド」を設立 [
Wikipedia]
・2001年5月:星子さんが音楽専科社を辞める
・2001年8月17日:商標登録される
・2001年11月16日:音楽専科社が特許庁に対して異議申立
星子さんは音楽専科社を辞める前から自分の会社作っていたんですね。まあ、後でも出てきますが、スターチャイルドには音楽専科社も出資していたみたいなので、この時点では会社も合意していて応援する体制だったんだと思います(むしろ、子会社として作ったのかもしれません)。
しかし、その後は、審決文を読むと泥沼になってしまったようです。詳しくは追って書いていきますね。
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さてそれでは、当事者間の主張を整理してみます。音楽専科社は取り消すべき理由をたくさんあげていますが、特許庁が認めた理由は1点だけ、
「本商標は商標法4条1項7号『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』に該当するので取り消します」なので、星子さんの反論もその点だけに集中しています。したがって以下ではその1点に絞って主張を並べていきます。
ちなみに、主張の順序は
「@音楽専科社が特許庁に取り消しを請求」
→「A特許庁が『こういう理由で商標を取り消します』と星子さんに通知」
→「B星子さんが『その理由はおかしい』と反論」
→「C特許庁が最終的に判断」
という4段階になっています。
@音楽専科社 →特許庁 |
(1) 「SHOCK WAVE」はすでに音楽専科社のイベントとして有名であり、星子さんはそれを当然知っているにもかかわらず、自己の名義で登録した。
(2) 商標登録された後、星子さんは音楽専科社に対してイベント名の使用を禁止しようとした。音楽専科社はそこで初めて商標登録の事実を知り、商標の返還を請求したが、交渉は成立しなかった。
これは公序良俗に反する行為であり、商標法に違反しているので、「SHOCK WAVE」商標は取り消してもらいたい。
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A特許庁 →星子さん |
(1) 「SHOCK WAVE」は音楽専科社が行っているイベントであり、星子さんはそれを進行させる立場であった。
(2) 星子さんが出願した「SHOCK WAVE」の商標が、上記イベント名と偶然一致したとは考えられない。
(3) よって、星子さんは、音楽専科社に無断で商標を出願し、登録を受けたと考えられる。
これは公の秩序を害するおそれがある。したがってこの商標登録は商標法4条1項7号に違反しているので、商標登録を取り消す。
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B星子さん →特許庁 |
(1) スターチャイルドを設立したのは、「SHOCK WAVE」を引き継ぐためである。音楽専科社はそれを承知していた。「SHOCK WAVE」のタイトルを使用することも了解を得ていた。
(2) スターチャイルドがSHOCK WAVEのイベントを行うようになってからは、音楽専科社は企画者として雑誌等に掲載されているが、名前だけで実質は関与していない。
(3) スターチャイルドがSHOCK WAVEを引き継ぐにあたって、他社に登録されることを防ぐため、自ら商標を登録するのは当然のことである。
したがって、星子さんの行為は公序良俗に反するものではない。
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・・・さて、ここまでで両者の言い分は明らかに対立しています。音楽専科社は「勝手に出願された」と言い、星子さんは「許可があった」と言っています。はたしてこれに対して特許庁はどう判断したかというと・・・
C特許庁の判断 |
(1) 音楽専科社とスターチャイルドの契約書の内容などから「SHOCK WAVE」のタイトルの権利は音楽専科社にあること、その使用を許可していたことが認められるが、商標登録まで認めてはいない。したがって、出願行為は許可を得ていたとは言えない。
(2) 名前だけで実質は関与していないと言うが、企画者として名前が掲載されており、企画の責任者であることは明らかなので、関与していないとは言えない。
(3) 「SHOCK WAVE」が音楽専科社およびSHOXXの企画運営によるイベントであることは有名であって、たまたま「SHOCK WAVE」の商標登録がなされていなかったことに乗じて星子さんが無断で出願したと考えるのが相当である。
したがって、この商標登録はやはり公序良俗に反するので、商標登録を取り消す。
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はい。ここでやはり勝敗を分けたのは契約書の内容だったんだろうと思います。「使っていい」と書いてあっても
「登録していい」とは一言も書いてなかったのであれば、さすがに出願してしまったのは飛ばしすぎじゃないかと思います。
星子さんも、反論の中で「使っていいと言われていたので出願した」としか言っておらず、「出願していいと言われていた」という主張はしていないので、黙って出願したというのは間違いないと思います。
っていうか、
スターチャイルド設立より商標出願のほうが半年も前なんですよね。新会社をつくるにあたっては、当然設立の前に長期にわたって会社との折衝を含めた準備期間があると思うんですが、いくらなんでも準備を進めている裏でこっそり商標を出願してしまうというのはいかがなものかと思います。
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ところで、ちょっと気になったんですが、「2 登録異議の申立ての理由」の中で、音楽専科社の主張として『商標権者は、平成13年5月に申立人の会社を
解雇されており・・・』と書かれています。
おっと、星子さんは円満退社ではなくて解雇だったんですか・・・。
星子さんからはその点を争った形跡はないし、そのあともこれについて触れている記述はないんですが、理由もなく「解雇」とは書かないと思うので、何かあったんでしょうね。たぬきとか見るとなんかそれっぽい噂はいろいろ書かれていますし。ソースがないので詳しくは触れませんけど、まあひと悶着はあったんだろうと思われます。
噂が真実かどうかと関係なく、会社に黙って会社がやってるイベント名を商標出願してしまうあたり、もう会社との関係は良好ではなかったんでしょうね。何があったかわかりませんが、そのような状況では星子さんは遅かれ早かれ音楽専科社には居られる状態ではなくなっていたと思われます。
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で、この結論が出たのが2003年9月25日。この時点で商標登録からすでに2年が経過しています。
ここで星子さんが引き下がれば話は終わりなのですが、星子さんはこの結論に納得せず、東京高裁に審決取消訴訟を起こしています。舞台を裁判所に移しての第2ラウンドについては
次の記事で。